摩訶般若波羅蜜多心経(まかはんにゃはらみったしんぎょう)

般若心経(はんにゃしんぎょう)は、とても有名なお経です。
多くの方が、聞いたり、写経したりしたことがあるかと思います。あるいは、自分でも唱えているという方もいらっしゃると思います。
ですが、あまり意味を知らずにお坊さん方が唱えるものだと感じている人もいるかもしれません。

般若心経には、「自分が存在する意味」が書かれています。

わずか262文字の、般若心経にはどんなことが書かれていて、どんな意味なのかを紹介していきます。

摩訶般若波羅蜜多心経 全文(よみがな)

摩訶般若波羅蜜多心経
まか はんにゃはらみったしんぎょう


1,観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時
 かんじざいぼさつ ぎょうじんはんにゃはらみったじ

2,照見五蘊皆空 度一切苦厄
 しょうけんごうんかいくう どいっさいくやく

3,舎利子 色不異空 空不異色
 しゃりし しきふいくう くうふいしき

4,色即是空 空即是色
 しきそくぜくう くうそくぜしき

5,受想行識 亦復如是
 じゅそうぎょうしき やくぶにょぜ

6,舎利子 是諸法空相
 しゃりし ぜしょほうくうそう

7,不生不滅 不垢不浄 不増不減
 ふしょうふめつ ふくふじょう ふぞうふげん

8,是故空中 無色無受想行識
 ぜこくうちゅう むしきむじゅそうぎょうしき

9,無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法
 むげんにびぜっしんに にしきしょうこうみそくほう

10,無眼界 乃至無意識界
 むげんかい ないしむいしきかい

11,無無明 亦無無明尽
 むむみょう やくむむみょうじん

12,乃至無老死 亦無老死尽
 ないしむろうし やくむろうしじん

13,無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故
 むくしゅうめつどう むちやくむとく いむしょとくこ

14,菩提薩埵 依般若波羅蜜多故
 ぼだいさった えはんにゃはらみったこ

15,心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖
 しんむけいげ むけいげこ むうくふ

16,遠離一切顚倒夢想 究竟涅槃
 おんりいっさいてんどうむそう くきょうねはん

17,三世諸仏 依般若波羅蜜多故
 さんぜしょぶつ えはんにゃはらみったこ

18,得阿耨多羅三藐三菩提
 とくあのくたらさんみゃくさんぼだい

19,故知般若波羅蜜多
 こちはんにゃはらみった

20,是大神呪 是大明呪
 ぜだいじんしゅ ぜだいみょうしゅ

21,是無上呪 是無等等呪
 ぜむじょうしゅ ぜむとうどうしゅ

22,能除一切苦 真実不虚
 のうじょいっさいく しんじつふこ

23,故説般若波羅蜜多呪
 こせつはんにゃはらみったしゅ

24,即説呪日
 そくせつしゅわつ

25,羯帝 羯帝 波羅羯帝 波羅僧羯帝
 ぎゃてい ぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい

26,菩提僧莎訶
 ぼうじそわか

般若心経
はんにゃしんぎょう

般若心経の現代語訳

1,観自在菩薩(観音様)が、智慧の完成を実践されていた時に気づかれました。
2,私たちの心と体「五蘊(ごうん)」は、すべて「空(くう)」だということがわかり、この世のあらゆる苦しみから解放されました。
3・4,舎利子(しゃりし→お釈迦様の弟子)さん、色と空は同じです。「この世のあらゆるものや現象には実体がないんです」(あらゆるものや現象は、様々な何かが集まって影響し合って形づくられたもの→因縁
5,「私たちの心もまた、【】なんです」
6,舎利子さん、この世のあらゆることは【】なんです。
7,生まれることも減ることもない、汚れることも綺麗になることもない、増えることも減ることもないのです。
8,この世のすべてが【】なのですから、私たちの心も体もないのです。
9,この世のすべてが【】なのですから、私たちの体についている眼・耳・鼻・舌・体・心はない。またそれらで感じる、色(いろ)・声や音・香り・味・触感・心で感じるものもないのです。
10,この世のすべてが【】なのですから、眼に見えるこの世界も、心の中の世界もないのです。
11・12,この世のすべてが【】なのですから、人生の苦しみの原因が無くなったり、苦しみの原因が無くなることが無くなったり、人生の究極の苦しみが無くなったり、無くなることが無くなったりします。(苦しみの究極の原因である心が迷うこと→無明、究極の苦しみの老いて死ぬこと→老死
13,この世のすべてが【】なのですから、お釈迦様が説いたこの世の4つの真理(四諦したい)もないのです。苦しみから解放される方法を知ることも得ることも無いのです。なぜならそのお釈迦様が説いた方法自体が無いのだから。(お釈迦様の教えは大事ですが、それよりも大事なのは、この世は全部空という考え。お釈迦様の言葉に執着するのではなく、この世の絶対のルールである「空」や「中道」を重視。)
14,菩薩は、智慧の完成をさせているので、
15,心を迷わすものがありません。心を迷わすものがないのだから、恐れることは何一つないのです。
16,あらゆるマイナスな感情を生む、悪い妄想はしないようになります。悪い妄想はなくなるので、苦しみから解放された安らかな境地にたどり着くのです。
17,様々な仏様や菩薩たちは、言葉で表現される智慧ではなく、本当の意味の智慧が理解でき、それをよりどころとしています。
18,完全なる悟りを得て、苦しみから解放されています。(阿耨多羅三藐三菩提ー原語アヌッタラー・サムヤックサンボーディ→サンスクリット語の音そのまま)
19,人々は苦しみから解放されるので、智慧の完成というのはどのようなことか知る必要があります。
20・21,智慧の完成とは計り知れない力を持った、他に比べるものがないほど最上の真言なのです。(真言→サンスクリット語で、マントラ。唱えることだけで、様々な効果をもたらしてくれるという呪文のこと)
22,(最上のご真言は)全ての私たちの苦しみを取り除いてくれる、偽りのない真実であります。
23・24,(最上のご真言は)智慧の完成する上で、次のように教えられたのです。
25・26,※この部分は真言で、マントラであるので訳しません。

般若心経の目的

まずは最初のタイトル部分『摩訶般若波羅蜜多心経』ですが、

摩訶まか」は、偉大とか優れているなどの意味で、美称に用いられることが多いです。
般若はんにゃ」は、自分の智慧(ちえ)=知恵のことです。
波羅はら」は、彼岸(悟りの境地、この世の苦しみから抜けた世界)のことです。
蜜多みった」は、至るのことで、行き着いたや到達したということです。
心経しんぎょう」は、大切な教え、を表します。

般若心経は、観音菩薩様がお釈迦様の弟子である舎利弗(しゃりほつ)尊者に説かれた場面の話となっています。

つまり、般若の智慧を完成されたということです。それは、六波羅蜜(ろくはらみつ)を実践されたということになります。

六波羅蜜

「六波羅蜜」とは、次の6つのことです。

  1. 布施(ふせ)⇒ 財を施すこと。財というのはお金や物だけではなく、あたたかいまなざしや優しい笑顔、何かのお手伝いも財施(ざいせ)となりますので、布施を一言で言えば、親切のこと。
  2. 持戒(じかい)⇒ 戒律を保ち、言行一致(げんこういっち)させること。言っていることと、やっていることを一致させなさい、約束を守りなさい、ということ。
  3. 忍辱(にんにく)⇒ 忍辱の反対は瞋恚しんい(怒り)なので、忍耐のこと。僧侶が身にまとう袈裟(けさ)も忍辱といいます。
  4. 精進(しょうじん)⇒ よく言われる肉や魚を食べないということではなく、「精」を出して「進」むと書くように、努力のことです。わかりやすく言うと、がんばることです。
  5. 禅定(ぜんじょう)⇒ 禅定の反対は散乱(さんらん)で、心がざわつきます。なので心をしずめ、定めることです。つまり、心を一つにすることです。
  6. 智慧(ちえ)⇒ 真理をはっきりとさせて、迷いを破るということです。仏様は、智慧と慈悲の覚体(かくたい)です。覚体とは、悟られ体得された方ということで、智慧と慈悲を兼ね備えられた方が仏様です。

五蘊

五蘊とは、人間を構成している5つのものです。
うん」とは、積集しゃくじゅうということで、集まりのことです。

  1. 色蘊しきうん」とは、肉体や、その他の物質のことです。
  2. 受蘊じゅうん」とは、苦楽を感受する働きです。
  3. 想蘊そううん」とは、認識する働きです。
  4. 行蘊ぎょううん」とは、意思をはじめとする、受蘊、想蘊以外の心の働きすべてです。
  5. 識蘊しきうん」とは、心のことです。

ですから、私たちの心身、心と体ということです。

おわりに

般若心経を訳してみて、意味がわかってもすぐに苦しみから解放されるわけではないかもしれません。
とてもこの【空】の思想の解釈は難しいと思います。

仏教にも様々な宗派があるように、教え方も解釈もさまざまあります。

しかし、自分自身で唱えてみる、写経してみることで感じること、気づくことがあります。

必ずしも勉強する必要はありません。せめて、書いてあることを理解してみるとより良い心持ちになるはずです。