みなさんが誰しも持つ、悩み。
生きているともちろん、色々なことがあります。
日々の生活に追われ、余裕が持てない。仕事で失敗した。上司や同僚との人間関係。学校での人間関係や成績など。
あげだしたらキリが無いほど、悩みはあります。
しかし、これらはすべて心が反応するから起こっています。
このことを、お釈迦様はしっかりと合理的に私たちに教えてくれています。
仏教は、宗教だと捉えられていますが、実はたいへん合理的な、または科学的な考え方です。
お釈迦様は、そのことをこの地球上で唯一人、一番最初にはっきりと真理を知った方です。
およそ2500年以上も前にインドで説かれていた教えですが、現在でも使える非常に合理的な考え方です。
悩みをまず、理解する
悩みは誰しも持っていますし、長い期間、それに苦しみます。
そして、なかなか解決や解消も難しいものです。
しかし、その悩みの正体(原因)がきちんとわかれば、解決策が出てきます。
つまり、解決できることなのに、その方法がわからないから、悩み苦しんでいるということです。
そこでお釈迦様は、とても合理的な考え方を見つけられました。
それは、
まず「悩み」がある。
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その「悩み」には理由(原因)がある。
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理由(原因)があるから、解決策がある。
という合理的な考え方です。

心の状態を意識
なので、まずはこの悩みやモヤモヤしている心を意識してみましょう。
例えば、
- 仕事で失敗してしまった。思うようにできない。
- 人とどう接したらいいかわからない。
- ずっと心の奥に、昔からの暗い過去がある。
- これから先、どう生きればいいかわからない。不安だ。
- 突然、事故や災害、病気になってしまった。
- 子育てや家族関係がうまくいかない。 などなど
このように人それぞれに抱えている、悩みがあります。
こうした悩みでの苦しみを、仏教では四苦八苦(しくはっく)といい、8つの苦しみがあるといわれます。
- 生苦しょうく ⇒ 生きることの苦しみ
- 老苦ろうく ⇒ 老いることの苦しみ
- 病苦びょうく ⇒ 病にかかる苦しみ
- 死苦しく ⇒ 死ぬことの苦しみ 四苦
- 愛別離苦あいべつりく ⇒ 愛する人と別れなければならない苦しみ
- 怨憎会苦おんぞうえく ⇒ 厭わしい、会いたくない人に会う苦しみ
- 求不得苦ぐふとっく ⇒ 求めてる欲しいものが手に入らない苦しみ
- 五陰盛苦ごおんじょうく ⇒ ままならない人間の心、肉体があるがゆえの苦しみ 八苦
このように仏教では、人生に悩みや苦しみが必ずあるんだという現実をあるものだとしています。
「ある」ものは「ある」と、まずは理解しましょう。
ここから、解決へ進んでいけます。
悩みの正体(原因)
お釈迦様は、悩みや苦しみの解決方法を4つにまとめてくれています。
それは、4つの真理で「四諦」といいます。
- 苦諦くたい ⇒ 生きることは苦である。一切皆苦。
- 集諦じったい ⇒ 苦の原因は、煩悩である。
- 滅諦めったい ⇒ 煩悩を消すことで苦が滅する。諸行無常なので、ありのまま受け入れる。
- 道諦どうたい ⇒ 悟りを得るための八正道。
仏教は世界三大宗教などと、一般的には言われますが、これを見てもらえればわかるように、
「何かを信じれば救われる、大丈夫」というような宗教ではありません。
このように考えていけば、「悩みや苦しみから抜け出すことができる」という、
とてもシンプルで合理的な思考法なのです。
それでは、悩みや苦しみの原因は何なのでしょうか。
仏教では、苦しみの原因は執着(しゅうじゃく)にあると教えられています。
執着(しゅうじゃく)について、詳しくはこちらをご覧ください。
なぜ私たちは、日頃からたくさんの悩みや苦しみを生み出してしまうのか。
それは、心の反応です。
嫌なことがあってイライラする、焦る、不安になるこれらは全て、心が反応したから起きたことです。
執着(しゅうじゃく)になる前に、この心が反応することによって、
悩みや苦しみを私たちは生み出しているのです。
だから、ムダに反応しないことをまずは心がけましょう。これが1番目の理解です。

心が反応する原因
あらゆる悩みや苦しみは、まずは反応する心から始まっていました。
では、なぜ私たちは反応してしまうのでしょうか。
例えば、「嫌な事があってイライラする」のは、嫌な事があったからです。
これは非常にわかりやすいですが、なかにはなぜ反応するのかわからないこともたくさんあります。
そのような反応の原因がわからない反応に関しても、解決策がきちんとあります。
お釈迦様は、それを「求める心」と説きました。
これは、私たちが生きている間ずっと心の底で流れている意識です。
この求める心が出てくると、欲求になります。
仏教では、代表的な欲求を五欲(ごよく)といいます。
- 食欲 ⇒ 食べたい、飲みたい心。
- 財欲 ⇒ お金や物が欲しい心。
- 色欲 ⇒ 好きな人に愛されたい、求める心。
- 名誉欲 ⇒ 褒められたい、認められたいなどの承認欲求。
- 睡眠欲 ⇒ 眠りたい、少しでも楽をしたい心。
このように人間は、まず求める心ができます。その心が、欲求を生み出します。
そして、その欲求に動かされて心が反応します。ある時は、欲求が満たされ喜びます。
またある時は、欲求が満たされず不満などが生まれます。
このサイクルをずっと繰り返すのが、人間の人生です。
この5つの欲求のなかでも一番厄介なのが、名誉欲です。
最近みなさんもよく耳にするであろう、いわゆる承認欲求ですね。
これは、褒められたいとか認められたいという欲求です。
小さい時は、親に褒められたい、愛されたいという欲求が、だんだん大人になると、
人に尊敬されるように、スキルを上げたいという上昇欲や、
他人よりも自分の方が優れているという、優越感やプライド、
その反対に、自分はなんてダメなんだろうという、劣等感や負い目などになります。
これらは、渇愛(かつあい)とも呼ばれるように、心が渇いて満たされない心です。
ですから何度も言うように、
「私には今、満たされていない承認欲があるんだ!」と、意識して理解しましょう。
自分の心が渇いていると理解するだけでも、不満から一歩抜け出せます。
「ある」ものは、「ある」ときちんと理解することで、
あの人に認められたからってどうなの?というようにも考えられます。
心をあきらかに見る
これまで書いてきたように、悩みや苦しみを解決するには、反応をしないで、まずは理解するです。
特に、自分のありのままの心をしっかりと見ましょう。
これを仏教では、「諦める(あきらめる)」といいます。
諦めるとは、断念することではなく、あきらかに見ることです。
諦めるについては、こちらの音声で配信しています。
心の状態をあきらかに見る方法としては、3つあります。
- 口に出して、言葉で確認する。 ⇒ 名前を付けることで、理解すること。
- 自分の感覚をしっかり意識する。 ⇒ 瞑想、心が静まり、落ち着くこと。
- カテゴリに分類する。 ⇒ 観念的に理解する。
このように、まずは今の気持ちをファイルに名前を貼り付けるように、
口に出して言葉で確認してみましょう。
今、イライラしている、疲れている、落ち着かない、落ちているなどと感じて言ってみてください。
さらに、日常やっている動作や行動でも同じように言葉にしてみてください。
今、歩いている、ご飯を食べている、作業をしている、お風呂に入っているなどです。
こうする習慣をつけることで、客観的に自分を理解できて、反応からも抜け出せます。
メンタルヘルスに繋がります。
次に2つ目に、感覚を意識する方法です。
これは、瞑想のように目を閉じて、自分の身体や五感すべてを意識してみましょう。
今、右手が膝に触れている、鼻で空気を吸い込んでいる、鼓動の速度はこれぐらいなどです。
この感覚をゆっくりと感じたら、さらに今度は同じ動作や感覚を目を開けて、目で見ながら意識してみてください。
膝に触れるとこんな感覚で、目で見るとこんな感じなどです。
これは仏教の修行でも、重要視されている瞑想です。
マインドフルネスという言葉でも、聞き覚えがあると思います。

これをすることでも、ムダな反応が止まり、心が落ち着き、集中することができます。
そして3つ目に、これらの心の状態をカテゴリ分けして分類してみましょう。
すると、観念的に理解することができます。
仏教では、心の煩悩を大きく3つに分けられていて、三毒(さんどく)といいます。
この三毒は、貪 瞋 痴(とん じん ち)の3つです。
貪は、貪欲のことで、求めすぎる心です。これに支配されると、苦しみが生まれ、他人にも影響を与えます。
瞋は、怒りのことで、イライラやストレスを感じている心です。
求める心には、この怒りが常にまとわりついています。
痴は、知らないとかおろかということです。つまり、妄想とも言えます。
頭の中でぼんやりと様々なことを考えている状態です。
この妄想は、人間が最も上手であり、大好きで、ほとんど一日中絶え間なく繰り広げている煩悩です。
仕事であったり、家事などで、あれもこれもしなくてはと考えたり、
これから先どうなるだろうと、不安になったり、
悲しかった過去を思い出し落ち込んだりという心は妄想からきています。
ただ中々、妄想を振り払うのは難しいです。
でも、意識して消せるように、習慣にしてみましょう。
これは妄想だという状態と妄想以外の状態を意識して区別しましょう。
それには、妄想と身体の感覚に区別するといいです。
例えば、先ほどの瞑想のように目を閉じて、何でもいいので思い浮かべてください。
食べたものでもいいですし、テレビなどで観た映像でもいいです。
そして、今度は目を開けて辺りをよく見ます。これが今見ている視覚だと意識します。
この時、目を閉じて思い浮かべていた映像は存在しないので妄想です。
これら二つを明確に意識して理解してみましょう。
このように習慣化することで、妄想から抜けることが楽にできるようになります。
おわりに
ここまで書いてきたことをまとめると、
悩みや苦しみをまずは理解する。
その原因には、心の反応がある。
心の反応には、求める心や五欲の欲求がある。
そして、心を理解するには、口に出して言葉にする。感覚を意識する。カテゴリに分ける。
心の煩悩は、貪瞋痴(とんじんち)という三毒である。
ということでした。よくモヤモヤすると、言ったり聞いたりしますよね。
それは、自分の心の状態がしっかりと見えていないからです。
ですから、今回示した内容でしっかりと正しく自分の心を理解してみてください。
これだけでも、心のムダな反応が抑えられて、スッキリとした気持ちになるはずです。
これ以上は、長くなるのでまた次の記事にしたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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