曼荼羅・曼陀羅(まんだら)と聞くと、掛け軸などで多くの方が観たことがあると思います。
シンメトリーで描かれ、大変綺麗で観る人を魅了しますよね。
しかし何を表しているのか、なぜ漢字表記が二つあるのか、なかなかご存じないかもしれません。
曼荼羅と曼陀羅の違いとは
「曼荼羅」と「曼陀羅」はよく似ていて一文字違いですが、本来は別々の言葉です。
漢字による表記のバリエーションとして「曼陀羅」がありますが、日本の重要文化財等の指定名称は「曼荼羅」に統一されています。
また、日本では、神仏が集会(しゅうえ)する図像や文字列に、チベットでは、須弥山(しゅみせん・スメールを中心とする全世界を三世十方(さんぜじっぽう)の諸仏に捧げる供養の一種を「曼荼羅供養」といい、「曼荼羅」の呼び方が使われています。
なので、みなさんがよく目にする図絵などは「曼荼羅まんだら」こちらの表記のことになります。

一方こちらの「曼陀羅」は、「曼陀羅華まんだらげ」であり天上に咲くという花の名前です。
色が良く、すばらしい芳香を放ち、高潔でこれを見る者の心を喜ばせるといわれる天上界の花です。
調べていただくと、朝鮮朝顔のこととも書かれていますが本来は、天上界で咲いている花のことです。
〈胎蔵界たいぞうかい曼荼羅〉〈金剛界こんごうかい曼荼羅〉
曼荼羅は、真言密教において大日如来様の悟りの境地を図画したものです。
様々な種類がありますが、両界、つまり「胎蔵界たいぞうかい」と「金剛界こんごうかい」というふたつの世界です。

密教の二大経典(きょうてん)に、胎蔵界を代表する経典「大日経だいにちきょう」と、
金剛界を代表する経典「金剛頂経こんごうちょうぎょう」があります。
大日経は大日如来様の説法についてまとめたもので、その真理、つまり悟りの世界について説いています。
金剛頂経は大日如来様の真理を体得して、悟りを開くための方法について説いています。
なので、両界はふたつでひとつであり、両界曼荼羅も必ず対で描かれます。
胎蔵界曼荼羅は、大日如来様の慈悲が放射状に伝わり、教えが実践されていくさまを表しています。
大きな慈悲で子どもを育てる母胎のようなイメージから、「胎蔵曼荼羅」とも呼ばれます。
金剛界曼荼羅は、中央の成身会(じょうじんえ)をはじめ、会(え)と呼ばれる9の区画からなります。
金剛頂経の教えを表す成身会は、大日如来の智慧(ちえ)の世界そのものともいえる会で、単独で金剛界曼荼羅と呼ばれることもあるほど重要な会になります。
ともに大日如来様を中心として表されますが、それぞれの世界で、手指でつくる印のかたちが異なっています。
胎蔵界では、膝の上に右手が上になるように、両手を仰向けに重ね、左右の親指の先をつける法界定印(ほっかいじょういん)。

金剛界では、金剛拳にした両手から、立てて伸ばした左手の人差し指を右手の小指で握る智拳印(ちけんいん)。

真言密教では、こうして異なる姿の大日如来様を対とし、一体とすることで、胎蔵界と金剛界は根源的には一体であり、その教えはふたつでひとつのものである金胎不二(こんたいふに)を表しています。